自然妊娠をねらう精路再建手術は、奥さまが若く、不妊原因が見つからない場合のみ
精路再建手術は、閉塞性無精子症に対して行われる治療で、無事、開通すれば繰り返し自然妊娠が期待できますし、奥さまには不妊治療の負担がほとんどなくなるという大きな利点があります。
ただし、婦人科では、このような選択肢があることを説明している施設は少ないと思われます。
おそらくは精子回収法で得た精子を使って顕微授精(ICSI/イクシー)を行うほうが、確実だからでしょう。
また、残念なことに国内で精路再建手術を得意とする泌尿器科医は多くはありません。
なお、術後、夫婦生活による自然妊娠を試みる時間的余裕が必要になりますので、奥さまに不妊原因が見つかっておらず、若いことが実施条件になってくるでしょう。
パイプカット後の再建は好成績。
ただし閉塞期間が長いと再疎通率や妊娠率は落ちます
精路再建手術で多く見られるのは、避妊目的の精管結紮(パイプカット)をされたのち、再び何らかの事情(再婚など)で子どもを希望され、精管と精管をつなぐ精管精管吻合術です(保険適用外のため自費)。
このようなケースでは、精路再建手術によって精子が射出精液中に出てくるようになる確率が高いとされています。
ただし、パイプカット後時間が経過していると、精巣上体が閉塞を起こしていることもありますので、その場合には非常に難易度の高い精巣上体精管吻合術が必要になることもあります。
また、幼少期に受けた両側鼠径ヘルニアの手術で、精管が閉塞して無精子症(保険適用)になっていることもあります。
閉塞期間が長いと術後の再疎通率は高くありませんので、ARTも視野に入れながらのチャレンジが必要になるかもしれません。
中には精路閉塞に加えて、精子の形成が途中で止まっている成熟停止である可能性も皆無ではありませんので、精路再建手術前には十分なインフォームドコンセントが大切です。
成熟停止の場合、ホルモン検査では、閉塞性無精子症の様相を呈しながら、実際には精子形成が途中で止まっている非閉塞性無精子症になります。
成熟停止の原因であるY染色体のAZFb領域に微小欠失がないかを、あらかじめ血液検査で確認しておくことも大事でしょう。
情報更新日:2021年12月9日