以前は、不妊の原因は一方的に女性側にあると考えられがちでした。
実際には、男性側が妊娠を妨げる問題を抱えているケースも多く、不妊に悩む夫婦の半数に男性側にも不妊原因が見つかるとされています。
造精機能や精管に問題を抱えていて、精液の状態に問題がある男性不妊症
造精機能やホルモンレベルに問題があって精巣内でうまく精子がつくられなかったり、精嚢や前立腺といった副性器に炎症が起こっていたり、精巣上体から送り出された精子が通る精管や射精管に閉塞があったりすると、精液の状態が悪くなり、妊娠成立に不利になります。
なお、精液の検査所見は変化が激しいため、一定期間をあけながら何度か精液検査を受けてみてください。
常に問題がある場合には、男性不妊と診断されることになるでしょう。
奥さまが基本的不妊検査などで通われている婦人科でも、男性不妊外来がある泌尿器科でもどちらで精液検査を受けてもかまいませんが、奥さまが本格的な不妊治療に入られる前に検査されることが大事です。
2010年に世界保健機構(WHO)が精液検査所見の基準値を以下の表のように変更しました。
それまでは精子濃度2000万個/ml以上としていたところを1500万個/ml以上に、前進運動精子50%以上としていたところを32%に見直していますので、どちらかというと診断基準がゆるやかになり、より多くの男性が胸をなで下ろす値になりました。
ただし、これは自然妊娠が成立する下限に近い値であり、妊娠しやすい精液所見となると、精子濃度は4000万/ml、運動率50%以上との意見もあるため、不妊治療を行う施設によって人工授精(AIH)をすすめられることになる精液所見の値は異なっているとお考えください。
そもそも自然妊娠がかなった男性は精液検査を受けませんので、実際のところ、日本人の精液の正常値はわかっていないのです。
精液の基準値 (WHO 2010) | |
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精液量 | 1.5mL以上 |
精子濃度 | 1mL中に1500万個以上 |
精子運動率 | 前進運動精子32%以上 |
正常形態精子 | 4%以上 |
生存率 | 75%以上 |
白血球数 | 1mL中に100万個未満 |
夫婦生活を持ち、女性の腟内に射精することができない性機能障害
精子は問題なくつくられていて精管も通っていても、勃起不全で夫婦生活(セックス)自体が困難だったり、女性の腟内に射精できなかったり、射精している感覚はあるものの精液が射出されなかったりすることを性機能障害といいます。
女性の体内に精子を送り出すことができないため、卵子と精子は出会えず、妊娠することができません。
情報更新日:2021年12月9日