胚凍結は、多胎妊娠とOHSSの重症化を避け、より安全な妊娠をねらう技術です
多胎妊娠を避けるため胚移植数を1個ないし2個にする(※)ことで、余剰胚ができた場合には、胚を凍結保存します。
また、最もグレードのいい胚については、あえて採卵周期に新鮮胚で戻すのではなく、理想的な子宮内膜環境を整えてから戻すため、戦略的に凍結保存することもあります。
さらに、卵胞がたくさん育ちすぎたような場合には、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の悪化を回避するために、全胚凍結を選択することもあります。
OHSSは絨毛(やがて胎盤になる組織)から分泌されるhCGによって重症化するため、OHSSの兆候がある場合には妊娠そのものを避けなければならないケースもあるのです。
胚移植の第一選択を変えたガラス化法の誕生
凍結保存にマイナス196℃の液体窒素を用いたガラス化法(急速冷凍法)が用いられるようになってから、それまでは凍結が難しいとされていた胚盤胞も安全に保存できるようになりました。
凍結保護剤によって胚に含まれる水を抜くことで、細胞に大きなダメージを与える氷晶をつくらせずに凍結が可能になったのです。
これにより、融解後の胚の生存率も飛躍的に高まりました。
当初心配された凍結保護剤の細胞毒性についても、胎児の先天的異常を引き上げないと考えられており、最近では初期胚の凍結にも積極的に用いられるようになっています。
このガラス化法は、間違いなく近年の日本のARTの中心を新鮮初期胚移植から凍結融解胚(胚盤胞)移植に変えた技術革新でしょう。
※多胎妊娠を避けるため、日本産科婦人科学会が定めるガイドラインで「原則として単一とする。
ただし、35歳以上の女性、または2回以上続けて妊娠不成立であった女性などについては、2胚移植を許容する」と決められています。
情報更新日:2021年12月9日