体外受精の合併症

体外受精にともなって起こりえる合併症を、あらかじめ承知しておきましょう。

【卵巣過剰刺激症候群(OHSS)】

OHSSは、排卵誘発剤の投与によって卵胞が過剰に発育したため黄体期に卵巣が腫れることで、腹水がたまったり、胸水がたまったりする症候群です。

35歳以下の若い方、やせ型の方、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方は、リスクが高いといわれていますので、あらかじめ担当医から説明を受けておきましょう。

くわしくは……「OHSS(卵巣過剰刺激症候群)と回避策」へ

【採卵時の麻酔による合併症】

採卵中の痛みを軽減するため、通常は比較的安全な鎮痛剤、鎮静剤、麻酔薬が使われていますが、アレルギー症状が出る場合があります。

あらかじめわかっているアレルギーや喘息の既往歴がある方は、担当医に自ら伝えておくことが大切です。

麻酔の深刻な合併症として、呼吸抑制、血圧低下、ショックなどの生命にかかわる重篤な症状が起こりえます。

そのほかの合併症として、点滴部位の一時的な局所の腫れやしびれ、麻酔薬の副作用による悪心(採卵当夜、または翌日まで麻酔の影響が残り、気分が優れないことも)や嘔吐、まれに一時的な血栓性静脈炎を発症することがあります。

麻酔当日の自動車の運転は禁忌です。

【採卵針によるトラブルと出血】

採卵は、経腟超音波での画像を確認しながら慎重に行われますが、血管、子宮、卵管、腸管を誤って穿刺してしまうことがありえます。

穿刺部の出血が止まりにくく、腹腔内出血が多量の場合には、緊急手術輸血が必要になることも。

また、膀胱を穿刺することで血尿が出たり、膀胱内出血に対する処置が必要になったりすることがあります。

【採卵後の炎症と腹痛】

採卵後、卵巣、腹腔内、骨盤内に炎症を起こすことがあります。

炎症が重症化した場合は、開腹手術を行うことがあります。

採卵後、腫れた卵巣がねじれること(卵巣嚢腫茎捻転)によって激痛を感じることがありますので、その場合は至急、治療施設に連絡してください。

【多胎妊娠】

多胎妊娠を防止するため、日本産科婦人科学会のガイドラインでは、胚移植数を「原則として単一とする。

ただし、35歳以上の女性、または2回以上続けて妊娠不成立であった女性などについては、2胚移植を許容する」と限定しています。

このガイドライン下で行われた体外受精での妊娠例のうち、多胎妊娠の割合は約5%です(※日本産婦人科学会の平成23年度倫理委員会報告より)。

自然妊娠での多胎妊娠の割合は1%前後といわれています。

なお、非常に低い確率ですが、単一胚移植でも一卵性双胎による双子、2個胚移植でも一卵性双胎による三つ子以上になる可能性はあります。

【異所性妊娠(子宮外妊娠)】

胚移植では、子宮の中に胚を戻すにもかかわらず、化学的妊娠例の約1~2%異所性妊娠(子宮外妊娠)になります(※日本産婦人科学会の平成23年度倫理委員会報告より)。

とくに卵管の機能が低下している方は、その確率は高くなります。

その場合は、入院のうえ手術が必要になることも。

くわしくは……「異所性妊娠(子宮外妊娠)とは」へ

【先天異常・遺伝的リスク】

現在までのところ、胎児異常の発生率や出生児の発育は、自然妊娠と変わらないと報告されています。

ただ、その一方で体外受精によってできた子どものほうが胎児異常の発生率がわずかに高いという報告もありますので、まだ完全には判明していない点があるとお考えください。

情報更新日:2021年12月9日


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